この記事を書いた理由
私は2022年に不動産投資を始め、リフォーム業者の自己破産により500万円の損害を被りました。同じような被害に遭う方を一人でも減らしたいという思いで、この体験談を公開します。
📖 目次
不動産投資を始めたきっかけ
私は関東地方に住む会社員で、勤続10年以上になります。しかし「このまま定年まで安定して働いていけるのだろうか」という疑念を抱き、別の収入の柱を持ちたいと考えるようになりました。
そこで5年ほど前から不動産投資に関心を寄せ、さまざまな書籍を読んだり、大家の会に所属したりしながら勉強を重ねました。そして2022年の夏、ついに初めての物件を購入することにしたのです。
購入した物件の詳細
購入したのは一都三県エリアにある築40年ほどの戸建てです。築古ということもあって少し傷みはありましたが、前面道路が広く、駐車スペースも作れそうな立地でした。100万円で現金買いしたので、「大きなヤケドはしないだろう」と考えていました。
リフォーム業者の選定と契約
物件購入後すぐに、リフォーム業者探しを開始しました。雨漏りの修理、外構工事、キッチンや風呂、洗面化粧台の入れ替えなどの作業を依頼する予定でした。
5社ほどに相談しましたが、見積もりにはかなりばらつきがありました。「うちではちょっと…」と断られるところもあれば、「300万円は超える」と言われるところもありました。
そんな中で、「200万円で頑張ります」と言ってくれたのが、後にトラブルの原因となる「X」という一人親方でした。価格の安さはもちろんですが、私と同郷で話が盛り上がり、「精一杯頑張ります」「任せてください」という熱心さに心を打たれ、Xに依頼することにしました。
振り返って思うこと
価格の安さと人柄の良さだけで業者を選んでしまったのが、最初の間違いでした。実績や資金力、過去の施工例などをもっと詳しく調べるべきでした。
トラブルの始まり – 度重なる追加請求
契約を結んだのは2022年秋でした。当初の見積もりは200万円でしたが、何か追加費用がかかるかもしれないと考え、余裕を持って約300万円のリフォームローンを組みました。
しかし、契約直後からさまざまな理由で工事費用の前払いを要求されるようになりました:
- 「年内に部材を発注しないと値上がりしてしまう。今、その分の費用を振り込んでほしい」
- 「工事のための備品が盗難にあった。残金を全額支払ってくれないか」
- 「浄化槽で不具合が起きている。近隣にも迷惑をかけているので、この工事の代金を急いで支払ってほしい」
1度に要求される金額は30万~90万円ほど。こうした要求が十数回行われ、私は結局、計500万円以上をXに支払ってしまいました。
なぜ支払い続けたのか
「無理を言って安くお願いしてしまっている」という心苦しさがありました。また、浄化槽の件では「近隣に迷惑をかけている」と言われ、「赤字になったとしても、一刻も早く直さないといけない」と思い込んでしまいました。
工事の遅延と連絡不通
当初は2023年1月に完成予定でしたが、工事は大幅に遅れました:
- 2022年12月:「2月まで伸びる」と連絡
- 2023年3月:「浄化槽不具合の関係で4月にずれる」と連絡
- 夏頃:たびたび連絡が取れなくなる
- 2023年7月:「7月末には完了する」と約束
- 7月下旬:「工事を依頼した業者が夜逃げした。部材が搬出できず、工事が終わらない」
結局、3、4カ月で終わる予定だった工事は、10カ月経っても終わりませんでした。大家仲間からも「これ以上お金を払うのはやめたほうがいい」とアドバイスされ、私も「もう一度仕切り直しましょう」とXに提案しましたが、返事はありませんでした。
8月以降、Xと一切連絡が取れなくなりました。メールや手紙を送っても反応がなく、自宅に赴いても接触できませんでした。
物件の実情を確認
物件に行ってみると、驚愕の事実が判明しました。作業着手から10カ月が経っているにもかかわらず、全体の2割程度しか作業が終わっていませんでした。発注した部材や取り外された洗面化粧台、古い畳なども放置されたままでした。
また、「浄化槽の不具合で迷惑をかけている」と言われていた近隣住民と話す機会があったのですが、「そういった不具合で迷惑を被った事実はない」ことも判明しました。
精神的な打撃
この時、私は「生きる気力を失っていた」と言っても過言ではありません。信じていた職人がいなくなり、お金を失い、物件のリフォームも終わっていない。全ての事実が受け入れられませんでした。
業者の自己破産と債権の免責
連絡がつかなくなってから約2カ月後、Xから突然郵便が送られてきました。廃業と自己破産に関する通知でした。Xからは「廃業という道を選び申し訳ない。形あるもので償いたい」とメッセージも送られてきました。
しかし、その後半年以上経過した現在に至るまで、Xから弁済などに関する連絡はありません。債権者集会も開かれ、私が支払った約500万円については「免責」と判断されました。つまり、返済されないということです。
Xの資産は数十万円である一方、私も含め複数の債権があり、負債総額は1000万円以上に上るとのことでした。自己破産が決定し、債権が免責となった以上、私への弁済義務はXにはありません。
債権者集会での出来事
債権者集会にはX本人も出席していました。しかし、目が合って軽く会釈されただけで、直接の謝罪はありませんでした。「形あるもので償いたい」と言っていたのは何だったのか、本心での謝罪ではなかったのかと思ってしまいました。
物件売却と意外な結果
リフォーム作業途中で放置されてしまった物件は、私自身で片付けました。その後、さらにリフォーム融資を借りることはしたくなかったのと、住まいから2時間近くかかる距離にあったこともあり、売却することにしました。
予想外の朗報
売却活動を始めたところ、いくつか反響があり、最終的に購入時の100万円より高い価格で売却することができました。完全に悲観的な結果ではなく、500万円の損失の一部を補填することができたのです。
損切を覚悟していましたが、予想以上の価格で売却できたことは、この辛い体験の中での唯一の救いでした。
最終的な損失と現在の状況
今回の件での私の損害を整理すると以下のようになります:
- リフォーム代金の支払い:500万円以上
- 物件の後始末費用:追加で数十万円
- 物件売却による一部回収:購入価格以上
- 精神的ダメージ:金銭に換算できない
金銭的な損失は物件売却により一部補填されましたが、それでも数百万円の実損害となりました。さらに、友人を1人失ってしまいました。物件を購入してすぐに、友人がこの家を借りたいと言ってくれていたのですが、工事が一向に終わらず、結局この件がきっかけで友人関係が悪化してしまいました。
学んだ教訓と今後の計画
今回の体験から学んだ教訓は以下の通りです:
業者選定での反省点
- 価格の安さだけで選んではいけない
- 過去の実績や施工例を必ず確認する
- 資金力や会社の財務状況も調査する
- 複数の業者から詳細な見積もりを取る
- 同郷だからといって安易に信頼しない
工事管理での反省点
- 追加請求には必ず根拠を求める
- 定期的に現場に足を運ぶ
- 不審な点があれば第三者に相談する
- 感情に流されず、冷静に判断する
- 契約書の内容をより詳細に詰める
最も重要な教訓
「相手に合わせすぎてしまった」ことが最大の失敗でした。ビジネスである以上、もっとシビアに、冷静に状況を見ることが必要でした。
今後の不動産投資について
今回こうしたトラブルに遭いましたが、不動産投資自体をやめようとは思っていません。むしろ、この経験を糧にして、より知識を身につけて再挑戦したいと考えています。
現在は以下の準備を進めています:
- 宅建の勉強
- 法律知識の習得
- 頭金の貯蓄
- 自宅から近いエリアでの物件探し
- レバレッジを活用したアパート投資の検討
読者の皆様への警鐘とアドバイス
特に私と同じ立場にある不動産投資初心者の方に、以下のことをお伝えしたいと思います:
業者選定時のチェックポイント
- 会社の登記情報を確認する
- 建設業許可の有無を確認する
- 過去の施工実績を見せてもらう
- 同業者からの評判を調べる
- 財務状況について可能な範囲で調査する
契約時の注意点
- 支払条件を明確にする
- 追加工事の承認プロセスを決める
- 工期の遅延に対するペナルティを設ける
- 中間報告の頻度と方法を決める
- 契約解除の条件を明記する
工事中の心構え
- 定期的に現場を確認する
- 追加請求には必ず書面で根拠を求める
- 不審な点があれば専門家に相談する
- 感情に流されず、ビジネスライクに対応する
- 記録を残す習慣をつける
最も重要なアドバイス
「おかしいな」と思ったら、すぐに専門家に相談してください。弁護士、建築士、同業者の大家さんなど、第三者の意見を聞くことで、客観的な判断ができるようになります。
終わりに – 前向きなメッセージ
今回のトラブルを「人生の糧にしたい」と前向きに考えています。辛い経験でしたが、この体験談を公開することで、同じような被害に遭う人を一人でも減らすことができれば、私の経験にも意味があると思います。
築古戸建てが悪いわけではありません。不動産投資そのものが悪いわけでもありません。ただ、どんな物件にも、どんな投資にもリスクはある。それを実感した出来事でした。
Xに対しては、激しい怒りよりも「もっとコミュニケーションを取ってほしかった」という思いが強いです。資金繰りが厳しいのであれば、そう言ってほしかった。少なくとも嘘をつかずに、誠実でいてほしかったと心から思います。
一緒に仕事をする以上、パートナーとして、私も力になれることがあったのではないかと、今でも思っています。
これから不動産投資を始める方へ
リスクを理解し、適切な準備をすれば、不動産投資は素晴らしい投資手段です。私の体験談を参考に、同じ過ちを避けて、成功への道を歩んでください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。皆様の不動産投資が成功することを心から願っています。