不動産投資の失敗談というと、「知識不足だった」「勢いで始めてしまった」という話が多く語られます。
しかし、この記事で扱う失敗は、そうした典型例とは少し性質が異なります。
私は2022年、関東圏で初めてとなる戸建て物件を購入し、不動産投資をスタートしました。
そしてその最初の物件で、リフォーム業者の自己破産により、約500万円の損害を被ることになります。
書籍を読み、大家の会に参加し、複数の業者から見積もりも取っていました。
それでも、結果としてこのトラブルを避けることはできませんでした。
この記事では、
「なぜ当時は正しい判断に見えてしまったのか」
「どこで修正できた可能性があったのか」
「なぜ最終的に止まれなかったのか」
を、時系列に沿って整理します。
前提|私は無知でも無謀でもなかった
よくある失敗談では、「何も分からないまま始めた」「勢いで買ってしまった」と語られがちです。
しかし、当時の私は次のような準備をしていました。
- 不動産投資関連の書籍を複数冊読む
- 大家の会に所属し、実践者の話を聞く
- 物件購入前後で、複数のリフォーム業者に見積もりを依頼
2022年夏に購入したのは、築40年ほどの戸建て。
価格は100万円を現金購入でした。
「築古だが、土地条件は悪くない。
最悪、リフォームが想定より高くついても、大火傷にはならないだろう」
当時は、そう考えていました。
リフォーム業者選定|200万円という数字が生んだ心理
購入後すぐに、リフォーム業者探しを始めました。
依頼内容は、雨漏り修理、外構、キッチン・風呂・洗面台の交換などです。
5社ほどに相談したところ、見積もりは大きくばらつきました。
- 「この内容だと、うちでは難しい」と断る業者
- 「300万円以上は見てほしい」と言う業者
そんな中で現れたのが、後に自己破産することになる職人、X(仮名)でした。
Xは一人親方として動いており、こう言いました。
「200万円で、頑張ります」
価格の安さは確かに魅力でした。
しかし、それ以上に強く残ったのは、別の感情でした。
Xは私と同郷で、話も合い、
「精一杯やります」「任せてください」と何度も口にしていました。
私は無意識のうちに、
業者を“対等な取引相手”ではなく、“応援すべき人”として見始めていたのだと思います。
「この条件で引き受けてくれるなら、こちらも誠意を見せなければ」
その心理が、後の判断を大きく歪めていきました。
契約後すぐに始まった「前払い要求」
契約を結んだのは2022年秋。
当初の予定では、「3〜4カ月で完成」という話でした。
ところが、契約直後から、Xは次々と支払いを求めてきます。
- 「年内に部材を発注しないと値上がりする」
- 「工事備品が盗難に遭った」
- 「浄化槽でトラブルが起きている」
要求される金額は、1回あたり30万〜90万円程度。
理由は毎回違いましたが、共通していたのは「今すぐ必要」という言葉でした。
私は当初、300万円のリフォームローンを組んでいました。
「追加が出ても、この範囲なら」と考えていたのです。
そして何より、
「無理を言って安くお願いしている」
「ここで断ったら工事が止まるかもしれない」
そうした思いが、支払いを正当化していました。
違和感はあったが、止まれなかった
もちろん、途中で疑問を持たなかったわけではありません。
- 進捗の説明が曖昧
- 質問しても要領を得ない回答
- 現場に行っても職人がいない日がある
ただ、その都度Xは、作業途中の写真を送ってきました。
「ちゃんとやってはいる」
そう思わせる材料は、常に用意されていました。
また、Xからは「他の現場も掛け持ちしている」と聞いており、
「忙しいのだろう」「優先度を上げてもらうには協力が必要だ」とも考えていました。
今振り返れば、これは完全に主導権を相手に渡していた状態です。
工期の延長、そして音信不通へ
当初は2023年1月完了予定だった工事は、
2月、3月、4月と、何度も延期されました。
2023年夏、「7月末には必ず終わる」と言われましたが、
その直前になって、
「依頼していた業者が夜逃げした」
という連絡が入ります。
この時点で、契約から約10カ月。
それでも工事は、体感で2割程度しか進んでいませんでした。
大家仲間からは、
- 「これ以上払うのは危険」
- 「一度止めた方がいい」
と助言を受けていました。
私はXに対し、
「一度工事を止めて、契約を結び直そう」
と提案します。
しかし、その連絡を最後に、Xは完全に音信不通となりました。
現場を見て、現実を突きつけられた
8月以降、メールも手紙も返事がなく、
自宅を訪ねても会うことはできませんでした。
現場に行ってみて、愕然としました。
着工から10カ月経っているにもかかわらず、
工事はほとんど進んでいなかったのです。
部材や撤去済みの設備は、物件や庭に放置されたまま。
近隣住民に確認すると、
「浄化槽トラブルで迷惑を被った事実はない」ことも分かりました。
私は弁護士に相談し、内容証明で契約解除と返金請求を行いましたが、
返答はありませんでした。
警察にも相談しましたが、当初は取り合ってもらえず、
精神的には完全に追い込まれていました。
自己破産、そして免責
連絡が途絶えてから約2カ月後、
Xから突然、自己破産と廃業の通知が届きました。
「形あるもので償いたい」とのメッセージもありましたが、
その後、具体的な行動はありません。
債権者集会に出席した結果、
私が支払った約500万円は免責と判断されました。
返ってくる見込みは、ゼロです。
この失敗から得た、たった一つの教訓
この経験で痛感したのは、
投資で最も難しいのは「始める判断」ではなく、「止める判断」
だということです。
もっと早く止めていれば、
損失は数十万円で済んでいた可能性もあります。
だからこそ、この話は恐怖談ではなく、
撤退判断を早めるための教材として残したいと思いました。
まとめ|真面目な人ほど、同じ構造にハマる
この失敗は、無謀な人だけが陥るものではありません。
むしろ、
真面目で、相手を信じ、責任感の強い人ほど、同じ判断をしやすい。
この記事が、あなたの「止まる判断」を一歩早める材料になれば、
500万円を失った経験にも意味があったと思っています。
